2023年8月15日、指揮者・飯守泰次郎氏が急性心不全により、82歳で逝去されました。
謹んで哀悼の意を表します。
私が飯守氏の指揮を生で聴いたのは、一度だけ。
それは2017年、秋田県大仙市で開催された「大仙市音楽祭」での仙台フィルハーモニー管弦楽団の演奏会でした。
秋田県民歌が奏でられた演奏会
X(旧Twitter)の仙台フィルハーモニー管弦楽団公式アカウントの過去のツイートを見てみたら、当時の様子についてツイートされていました↓
あの音楽祭で特に記憶に残っているのが、最後に演奏された「秋田県民歌」です。
秋田には親戚がいるため、私自身もこの歌に親しむようになりましたが、オーケストラで聴くのはその時が初めてでした。
オーケストラの澄んだ音色と荘厳な響きに、心の底から感動したことを覚えています。
客席の多くを占めていた秋田県民の方々も、きっと驚きと喜びをもって聴き入っていたことと思います。
まさに“憎い演出”とも言えるサプライズで、会場の雰囲気は最高潮に達していました。
優しく微笑んだ飯守氏のまなざし
演奏後、観客席に向かって優しく微笑んでいた飯守氏の表情が今も印象に残っています。
気品と誠実さがにじむその姿に、会場にいるすべての人が温かい感動を覚えたのではないでしょうか。
飯守氏は長年にわたりドイツで研鑽を積まれた方。
この日の演目は、ベートーヴェンとメンデルスゾーンというドイツの作曲家の作品。
そして、秋田県民歌の作曲者・成田為三氏もまたドイツで学んだ人物です。
今にして思えば、あの音楽祭全体がドイツ音楽文化に満ちていたとも言えるでしょう。
そんな中での秋田県民歌の演奏は、ドイツ音楽と郷土の旋律が響き合う、非常に贅沢なひとときでした。
あのときに感じた感動は、年月を経た今も鮮明に思い出されます。
飯守泰次郎氏とヴァイオリンの奥村愛氏、仙台フィルの皆さんに、心から感謝申し上げます。
どうか安らかにお眠りください。