歴史を学ぶ

【弘前藩の足跡】秋田に残る本陣と駅場跡を歩く

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岩手県のお隣、秋田県の大仙市。

友人が住んでいて、美味しいラーメン屋さんも多いので、冬を除いて月1回くらいのペースで遊びに行っています。

大仙市といえば「大曲の花火」が有名ですが、かつては羽州街道沿いの宿場町としても栄えていた地域です。

何気なくこの地域の郷土資料を読んでいたところ、弘前藩の御本陣が置かれていたという記述を発見。

しかも跡地が現存している……だと……?

私の実家は青森県弘前市。弘前藩藩主が城を構えた街です。

うちのお殿様、秋田でお世話になっていたんでしょうか?

羽州街道の宿場、花館駅

現在は東北新幹線で東京へ向かうのが一般的ですが、かつて弘前藩主が参勤交代の際に通ったのは、秋田・山形・福島を縦断する羽州街道でした。

冷静に考えれば、藩主が秋田を通ったのは当然とも言えるのですが、実際に跡地が今も残っているとなると、歴史好きとしては興奮せざるを得ません。

旧大曲市(現在の大仙市)の郷土資料『大曲市史』によれば、花館には「駅場(えきば)」が置かれており、その駅場にある齋藤家弘前藩の本陣を務めていたそうです。

※「駅場」は参勤交代のための休泊施設、「本陣」は大名クラスが宿泊する場所です。

現在、この駅場と本陣の跡地にはそれぞれ、

  • 駅場 … 大仙市立花館小学校
  • 本陣 … 花館コミュニティセンター

が建てられています。地図を見ると、両者は小さな道を挟んで隣接しており、街道沿いの宿場構造が何となくイメージできます。

大仙市に用事があった先日、せっかくなので花館小学校前の羽州街道を歩いてみました。

すると、小学校のすぐそばに「高関下郷村(花館)駅場跡」と書かれた柱を発見。

かすれて読みにくいですが、「高関下郷村(花館)駅場跡」と書かれています

文字はややかすれて読みにくいものの、確かにそう刻まれています。

江戸時代、宿場町としてにぎわっていたであろうこの地域、現在は子どもたちの声が響く元気な街となっていました。

本陣の庭園の跡地を発見

続いて向かったのは、小学校のすぐ近くにある花館コミュニティセンター

その敷地の隣には、生垣、灯籠、石畳といった庭園の遺構らしきものが見られました。

近づいてみると…灯籠が建っていた!

完全な保存状態ではありませんが、ある程度整備されている様子です。

近づいてみると──灯籠も確認!

センターの職員さんに尋ねたところ、この場所にはかつて齋藤勘左衛門家があったとのこと。

さらに、館内で紹介していただいた『写真に見る花館の歴史』という資料の中に、「御本陣跡の庭内」という写真が掲載されており、現在の庭園と一致。

弘前藩の御本陣が置かれた齋藤家とは、齋藤勘左衛門家のことで間違いなさそうです。

今は少し寂しい雰囲気ですが、江戸の頃は風情ある庭園だったのでしょう。

おそらく、ここから山々を望むような美しい風景も見えたのだと思います(今は建物であまり見えませんが…)。

………うちのお殿様が、どうもお世話になりました。

正面にある立派な石垣は?

さて、本陣のすぐ正面に位置するのが、花館小学校の立派な石垣です。

歴史を感じる石垣

花館は川に囲まれた地形で、水害対策の一環として石垣が築かれたのでしょうが、これほど大きな石垣を持つ小学校は珍しい印象。

石の質感や積み方も年季を感じさせ、素人目ながら歴史がありそうだなと感じました。

ちなみに、花館小学校は明治初年の学制発布直後に設立された歴史ある学校で、来年150周年を迎えるそうです。

旧街道沿いの駅場跡に立地していることからも、地域の中核だったことがうかがえます。

この石垣も、長いあいだ地震や水害に耐えて地域を見守ってきたのでしょう。

短い滞在時間でしたが、古い街道沿いの建物を見ているだけでいろんな想像が膨らみ、楽しいひとときとなりました。

 

  • 訪問場所:花館コミュニティセンター(大仙市花館公民館)
  • 住所  :秋田県大仙市花館上町5−19
  • 訪問時期:2023年5月

 

<参考資料>

・『写真に見る花館の歴史』,花館の会,大曲市花館財産区,昭和59年.

・『大曲市史.第2巻 (通史編)』,大曲市,1999.7.

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