2025年4月10日にNHK青森 NEWS WEBで配信された話題の中から、気になったニュースをひとつ、備忘録としてまとめておきます。
今回注目したのは、「八戸市の館鼻公園で桜の観測が始まった」というニュース。
津軽出身の私は、八戸のことには少し疎く、館鼻公園の存在も知りませんでした。
調べてみると、そこには厳しい自然災害の記憶が刻まれていたのです。
2025年4月10日の主な青森ニュース
2025年4月10日の主な青森ニュースは以下の通りです(参考:NHK青森 NEWS WEB)。
- 青森県 宮下知事が大雪被害のりんご園視察
- 原発の事故の際の指針改正 東北電力「できるかぎり協力」
- 佐井村で「福浦の歌舞伎」上演 出演者の半数余は地区外から
- 大麻譲渡の疑いで逮捕の航空自衛官 不起訴に
- 全国有数のシジミ産地 青森県の十三湖で漁解禁
- 踏切事故防止へ 鉄道会社職員や警察官などが注意呼びかけ
- 八戸の館鼻公園で桜の観測開始「開花はまもなく」
- 青森県の不妊治療 助成対象拡大で保険適用の治療が実質無償化
- 東北電力の来月請求分の電気料金 3か月連続の値上がり
春の訪れとともに、今冬の雪の被害が明らかになってきたようです。
前日には弘前市長がりんご園を視察し、この日は青森県知事が平川市のりんご園を訪れました。
開花間近の館鼻公園とは?
今回気になったニュースは、「八戸の館鼻公園で桜の観測開始『開花はまもなく』」。
行ったことのない場所だったので、「どんなところなんだろう?」と気になって調べてみました。
以下、ニュースの要約です。
八戸市の桜の名所・館鼻公園では、今年も地元市民グループによる桜の開花観測が4月10日から始まりました。
以前は気象台が行っていましたが、測候所の閉鎖に伴い18年前から市民グループが引き継いでいます。
観測初日は約20人が参加し、ソメイヨシノの標本木を観察したところ、開花の目安となる5輪以上の花は確認されず、まだ1輪も咲いていませんでした。
しかし、つぼみは膨らんでおり、開花は間もなくと見られています。
「館鼻公園の桜を観まもる会」の会長は、今月14日ごろの開花、20日ごろの満開を予想し、「館鼻公園は海を見渡しながら桜を観賞できるので、ぜひ楽しんでほしい」と話していました。
ちなみに、X(旧Twitter)のアカウント「【公式】館鼻公園」さんによると、昨年の桜はこんな感じだったそうです。
海と緑を楽しめる公園。港町・八戸ならではの景観ですね。
この館鼻公園は、八戸駅から車で約10分の距離にあります↓
館鼻公園と津波の記憶
標本木のそばにあった石碑
Googleストリートビューで園内を見てみると、ニュースに登場した標本木を発見しました↓
また、標本木のすぐ近くに「地震海鳴りほら津浪」という文字が刻まれた石碑があるのも発見↓
これは一体………?
昭和三陸地震津波の記憶を刻む石碑
調べてみたところ、これは昭和8年(1933)に起きた昭和三陸地震津波を後世に伝える記念碑でした。
この昭和三陸地震津波による被害は以下の通りです↓
- 発生日:昭和8年(1933)3月3日
- マグニチュード:8.1(三陸沖)
- 津波:地震の約30分後に三陸沿岸を襲撃
- 死者・不明:3,064人
- 流失家屋4,034戸、倒壊1,817戸、浸水4,018戸
- 八戸市内では、負傷者1名、家屋流出8戸、倒壊28戸の被害
三陸沖を繰り返し襲ってきた津波のうちの一つで、被害の記憶を風化させないための石碑です。
「地震海鳴りほら津浪」………この短い詩のような標語から、地震と津波の恐ろしさが伝わってきます。
碑文の現代語訳
碑の裏面には、当時の惨状を記録した長文の碑文が刻まれています。
以下に碑文を掲載します(参考:国土交通省 東北地方整備局 )。
震嘯災記念碑
維持昭和八年三月三日午前二時三十分
四十八秒突如トシテ強震アリ爾後半刻
ニシテ洋上遥カ大音響ヲ聞キ閃光ノ發
スルヲ見ルヤ間髪ヲ容レサルニ海嘯ノ
襲フ所ト爲ル怒濤天空ヲ摩シ摧ケテ地
上ヲ濯フ一瞬多數ノ生命ヲ奪ヒ財産ヲ
拉ス阿鼻叫喚ノ聲随所ニ充チ其慘状言
語ニ絶ス事
天聽ニ達シ畏クモ救恤ノ資ヲ賜フ
皇恩無窮感激ニ堪ヘス聖旨ヲ奉戴シテ
官民一致此間ニ處シ孜々トシテ之カ復
興ニ懋メ其方途ヲ謬ラス全國ノ同情亦
翕然トシテ聚リ以テ罹災民ヲシテ能ク
其全キヲ得シメタルヲ欣フ被害地住民
ハ永ク此災禍ヲ追想シ宜シク之カ警戒
ト豫防ニ努ムルノ要有ラン于
斯ニ東京朝日新聞社募集ノ義損金ヲ以
テスル此記念碑建設ニ當リ青森縣県知事
多久安信標語ヲ記シ以テ深ク銘戒セシ
ムト云爾
昭和八年十一月十一日
八戸 高橋鐡工所 作
これをチャットGPTに現代語訳してもらいました。
昭和八年三月三日午前二時三十分四十八秒、突然の激しい地震が発生した。
その約三十分後、沖合から大きな音が聞こえ、閃光が見えた直後、津波が押し寄せた。
荒れ狂う波が空を突き破るように襲来し、大地を洗い流していった。
一瞬で多くの命が奪われ、財産が破壊された。現場はまさに地獄絵図で、言葉では表せない悲惨な状況だった。
この事態を受けて、天皇陛下から救援の資金が下賜され、その恩に被災地の人々は深く感謝した。
官民一体となって復興に励み、全国からの支援にも支えられ、元の暮らしを取り戻すことができた。
私たち被災地の住民は、この災害を決して忘れず、今後の警戒と予防に努めなければならない。
ここに、東京朝日新聞社の義援金によってこの記念碑を建立し、青森県知事・多久安信の言葉を刻んで、後世への戒めとする。
30分で津波が襲来………当時、逃れることがどれほど難しかったか。
あの短い標語「地震海鳴りほら津浪」の重みが、いっそう感じられます。
桜の名所で「危うきを思う」
普段、館鼻公園は八戸市民にとって憩いの場だと思います。
しかし、だからこそ「安きに居りて危うきを思う」ことができる、そんな場所でもあると感じました。
津波の関連で言えば、公園内には「八戸市みなと体験学習館 みなっ知」という施設もあります。
湊地域の歴史・文化、そして東日本大震災の被害を伝える学習の場とのこと。
館鼻公園は、自然の美しさとその厳しさの両方を教えてくれる場所なのだと思います。
最後に、館鼻公園の春の風景が楽しめる動画を。
八戸市広報チャンネルの「八戸の桜の名所」紹介映像です。
参考資料
<ウェブサイト>
- NHK青森放送局 青森 NEWS WEB
- 八戸市ホームページ 「八戸市の概要・災害の記録」(https://www.city.hachinohe.aomori.jp/section/bousai/shinsai_dvd/pdf/images/chapter1.pdf)
- 国土交通省 東北地方整備局 「東北地方における過去の地震による被害」(https://www.thr.mlit.go.jp/koriyama/roadtopics/niigata/03/kako.html)
- 国土交通省 東北地方整備局 「地区名 湊地区 所在 青森県八戸市大字湊町字館鼻 石碑」(https://www.thr.mlit.go.jp/road/sekihijouhou/archive/karute/aomori005.pdf)
※タイトルのイラストは、Googleストリートビューの風景を参考にAIで生成した創作イラストです。元画像をそのまま使用したものではなく、商用利用を目的としたものではありません。