ついに開幕した大阪・関西万博。
開催前はいろいろと批判があったものの、予想以上に盛況で、万博が順調に進んでいることを嬉しく思います。
その大阪・関西万博に関して、青森ねぶたが万博に向けて準備を始めたというニュースを目にしました。
青森ねぶたが万博という大舞台で注目を浴びる、またとない機会です。
万博出陣ねぶたのテーマは「青森港400年」
そのニュースとは、2025年4月17日にNHK青森放送局が配信した「大阪・関西万博での披露に向け 一足先に「ねぶた小屋」入り」。
以下はニュースの要約です。
大阪・関西万博での「東北絆まつり」に向けて、青森市役所ねぶた実行委員会が制作する大型ねぶたの制作作業が始まりました。
制作を担当するのはねぶた師の福士裕朗さんで、今年のねぶたは青森港の開港400年をテーマにしています。制作作業は青森市の「ねぶた小屋」で行われ、完成は6月上旬を予定しています。
青森開港400年といえば、以前私もブログで書きましたが、弘前藩二代藩主の津軽信枚が家臣の森山弥七郎に青森港の整備を命じたんですよね。
青森港の歴史を反映させるだけでなく、青森ねぶた祭のフィナーレがまさに青森港で行われることを考えると、ねぶたのテーマとして非常にふさわしいと感じました。
ニュース映像ではまだ詳細がわからなかったのですが、例えば、青森港の整備を象徴する船や波のモチーフが描かれるのではないかと思います。
津軽信枚や森山弥七郎といった歴史的人物も登場する可能性があり、非常に楽しみです。
55年前の万博にも青森ねぶたは出陣
万博出陣がねぶた観光の起爆剤に
このニュースに関連し、「万博とねぶた」というテーマで情報を探していたところ、興味深い記事を見つけました。
その記事とは、ねぶた名人の竹波比呂央氏が参加した「特別対談『弘前ねぷた VS 青森ねぶた』」。
※ねぶた名人とは、高いねぶた制作技術を持ち、ねぶた祭の振興に貢献してきたねぶた師のこと。
この対談で竹波比呂央氏は、1970年の大阪万博における青森ねぶたの展示が観光業に与えた影響について以下のように語っています。
1970年の、いわゆる大阪の万博、昭和45年ですけど。その時に岡本太郎の太陽の塔の下のお祭り広場に青森のねぶたが、いわゆる展示とかではなくてまるごと囃子もハネトも全部行って、そこで祭りを再現したと。その影響で観光客が右肩上がりでずっとこう伸びてきたということなんですね。
出典:弘前市ホームページ「第 1 部 ねぷたとは? – 特別対談『弘前ねぷた VS 青森ねぶた』」
万博で青森ねぶたをお披露目したことが観光の大きな起爆剤となったというのです。
この当時の貴重な写真を青森市の観光施設「ねぶたの家ワ・ラッセ」がx.comで投稿しています。
現在大阪・関西万博が開催中ですが1970年の開催時には第3代ねぶた名人佐藤伝蔵氏制作の「草薙の剣」が披露されました。この写真の他にねぶたが映った写真がないか探しております。情報をお持ちの方はワ・ラッセへご一報いただければ幸いです。#大阪万博 #ねぶた #ワラッセ pic.twitter.com/v1oRHWQXLZ
— ねぶたの家ワ・ラッセ (@warasse) April 20, 2025
竹浪氏の言葉の通り、あの有名な太陽の塔の前でねぶたがお披露目され、大勢の跳人の姿が。
このねぶた、荒々しくて躍動感があってすごくかっこいいです。
人出の推移で見る万博効果
竹浪氏が語った、万博の影響で「観光客が右肩上がりでずっとこう伸びてきた」という言葉。
ネットや国立国会図書館デジタルコレクションで調べてみたところ、昭和の時代の青森ねぶたの人出は以下の通りで、確かに増加の一途をたどっていたことがわかりました。
和暦 | 西暦 | 青森ねぶた祭の人出 |
昭和32年 | 1957 | 100万人突破 |
昭和35年 | 1960 | 150万人突破 |
昭和47年 | 1972 | 200万人突破 |
昭和55年 | 1980 | 300万人突破 |
昭和57年 | 1982 | 323万人を記録 |
上記の内容の通りにグラフ化してみると、確かに昭和45年(1970)の大阪万博のあたりから、青森ねぶた祭の人出は顕著に伸びていることがわかります。

100万人→200万人は15年で達成したのに対し、200万人→300万人は8年で達成しています。
もちろん、この時期はテレビの普及により青森ねぶたを知る機会が増えたことも大きかったでしょう。
また、昭和40年(1965)に常陸宮両殿下、昭和41年(1966)に皇太子両殿下が青森ねぶたをご覧になったことも人出の増加と関係があるかもしれません。
それらの事実を含めても、万博を通じて日本全国に暮らす人々に青森ねぶたを認知させた効果は非常に大きかったと推測されます。
今回も観光の起爆剤になるか
前回の万博でのねぶたお披露目により、青森ねぶたの人出は顕著に増加しました。
そして約半世紀後の現代。青森ねぶたの人出はコロナの影響により大きく減少しました。
具体的に言うと、コロナ前の令和元年(2019年)の人出は285万人でしたが、令和6年(2024年)には約98万人に減少しました。
これは、約80年前の昭和32年(1957)当時の人出(100万人)とほぼ同じ。
人出が減ったものの、インバウンド効果により観光消費は上向いているとの統計もありますが、運営側としてはやはり人出を従来の300万人近くまで戻すことを目指していると思われます。
前回の万博で青森ねぶたが注目され、その後観光業に大きな影響を与えたことを踏まえると、今回の万博でも同様の効果が期待されます。
こうした視点で見てみると、俄然万博ねぶたへの期待が高まってきます。
青森ねぶたが出陣する予定の万博のイベント「東北四季の彩り&東北絆まつり」は2025年6月13日(金)~15日(日)に実施されます。
YouTubeを通じて見届けたいと思います。
この機会を逃さず、観光業が回復し、さらに発展することを期待しています。
参考資料
- 『弘前ねぷた : 重要無形民俗文化財 歴史とその制作』,弘前市商工部観光課,1983.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12170965 (参照 2025-04-21)
- 「ねぶた名人 – ねぶたを知る」(https://www.nebuta.jp/know/master/master.html)
- 「ねぶたの変遷 – ねぶたを知る」(https://www.nebuta.jp/know/origin/changes.html)
<ウェブサイト>
- NHK青森放送局 青森 NEWS WEB「大阪・関西万博での披露に向け 一足先に「ねぶた小屋」入り」(2025/4/17)
- 弘前市ホームページ「第 1 部 ねぷたとは? – 特別対談『弘前ねぷた VS 青森ねぶた』」(https://www.city.hirosaki.aomori.jp/hirosaki400th/jigyou/pdf/20110228_3.pdf)
- ATV青森テレビ「青森ねぶた祭の経済効果は推計で306億円 高い知名度で訪日外国人に人気となり消費を底上げか」(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/1404599?display=1)
- EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト「【2か月前抽選のイベントをチェックしよう‼】6月15日~21日のイベントを紹介!」(https://www.expo2025.or.jp/news/event-20241213/)