2023年8月5日から後期展示が始まった特別展「皇室の名宝と秋田 ~三の丸尚蔵館 収蔵品展~」。
前期展示に引き続き、再び秋田県横手市の秋田県立近代美術館を訪れ、展示をじっくり鑑賞してきました。
今回のブログでは、印象に残った後期展示品を章別にご紹介します。
後期展示で印象に残った美術工芸品
第1章 皇室ゆかりの江戸美術
伊藤若冲「旭日鳳凰図」

特別展の受付前の掲示ポスターにも使われていた、今回の目玉作品の一つです。
雲間から姿を現した朱色の太陽を背に、二羽の鳳凰が描かれています。
鳳凰は細部まで緻密に表現されており、特に足と尾羽の描写は圧巻でした。
解説によると、明治22年(1889年)、明治宮殿の竣工を祝して、京都・西本願寺門主の大谷光尊から献上された作品とのこと。
この豪華さはまさに献上品にふさわしいと感じました。
じっくりこの絵を眺める方々、かなり多かったです(かく言う私も2、3分ほど眺めていました)。
第2章 近代絵画の名品
竹内栖鳳「虎」
この作品は昭和3年の即位の礼に際し、京都府から献上されたもので、三頭の虎を描いた屏風作品です。
左隻には二頭の虎、右隻には寝そべってこちらを見つめる虎が描かれています。
虎というと威厳や緊張感のあるイメージが強いのですが、この作品は迫力と可愛らしさが同居しているように感じました。
特に右隻の虎の表情がとても愛らしく、会場内のポスターにも採用されていました^^

第3章 平福百穗と金鈴社
平福百穗「朝露」
秋田県仙北市出身の平福百穗(ひゃくすい)による屏風作品。
宮内省が買い上げたもので、秋のすすきに降りる朝露を繊細な筆致と淡い色彩で表現しています。
前期展示で見た鮮やかな屏風とはまた違ったタッチで、同じ画家とは思えないほどの作風の変化に驚かされました。
秋田県仙北市には平福穂庵・百穂父子ゆかりの平福記念美術館という施設があるのですが、今度そこに行ってみようと思います。
第4章 秋田ゆかりの美術工芸品
東山魁夷「平成度 悠紀地方風俗歌屏風」左隻
平成の大嘗祭後の祝宴で飾られた屏風(大嘗祭とは、即位後初めて行われる新嘗祭のこと)。
前期展示では右隻(春の角館と夏の男鹿半島)が展示されていましたが、後期では左隻が展示され、秋の抱返り渓谷と冬の田沢湖が描かれています。
抱返り渓谷の紅葉は実際に見たことがあるのですが、絵でもその雰囲気がよく表現されていて、懐かしさを感じました。
一方、冬の田沢湖は未体験でしたが、静かな湖面と雪をかぶった山々の描写がとても美しかったです。
この屏風には窪田章一郎による和歌が添えられており、会場の解説に現代仮名訳が掲載されていました。
- 百年を 超ゆる桜木 咲きそろひ 栄えゆく春 角館まち
- 夏涼し 男鹿の岬の 青波に 穏しく浮ぶ あまた小島は
- 断崖を もみぢおほひて 輝よふや 水はみどりの 抱返りの谷
- 新代と この日明けゆく 田沢湖に 仰ぐ駒嶺 雪に真白き
前期展示の際にこの解説を見逃していたので、今回はしっかり読めて良かったです。
和歌を読んだうえで作品を鑑賞すると、また印象が変わってきますので、ここは要チェックです。
第5章 近代日本工芸の精華
犬張子形ボンボニエール
ボンボニエールとはフランス語で「菓子入れ」を意味します。
日本では、皇室の御慶事に際して饗宴の記念品として配られるものです。
今回特に印象に残ったのは、上皇陛下の御誕生時の御内宴のために作られた「犬張子形ボンボニエール」。
手のひらサイズの小箱に施された緻密な装飾と、犬張子のかわいらしさに目を奪われました。
今回も展示会場のガシャポンをやってみたんですが、このボンボニエールのキーホルダーを引き当てました^^
まるっこくてかわいらしい~!

ちなみに、また「文使」のキーホルダーも引き当てました。
三回連続で同じキーホルダー引き当てるって、けっこう確率低いですよね…。

また、今回は後期展示を見終えた記念として、展覧会図録(税込990円)も購入しました。

この図録には、東山魁夷の《悠紀地方風俗歌屏風》左右両隻が掲載されており、全体像を把握するのに役立ちます。
コンパクトながら充実した内容で、おすすめの一冊です。
特別展は9月3日(日)まで開催中!
7月8日(土)から始まった特別展「皇室の名宝と秋田 ~三の丸尚蔵館 収蔵品展~」も、いよいよ会期の終盤です。
前期・後期あわせて観覧できたことは、大きな収穫でした。
皇室と秋田のつながり、そして美術・工芸の奥深さを感じられる展覧会です。
展示作品の多くが「祝い」や「献上」をテーマとしており、鑑賞後には自然と心が晴れやかになる、そんな展示だったようにも思います。
ご興味のある方は、ぜひ秋田県立近代美術館へ足をお運びください。
- 展覧会 :特別展「皇室の名宝と秋田 ~三の丸尚蔵館 収蔵品展~」
- 観覧料 :一般 1,200円、高・大学生 1,000円、中学生以下 無料
- 開催期間:2023年7月8日(土) ~ 9月3日(日)
- 休場日 :2023年8月3日(木)、4日(金) ※展示替のため
- 開催場所:秋田県立近代美術館(秋田県横手市赤坂字富ヶ沢62-46)
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