歴史を学ぶ

【昭和の青森行幸】あすなろ国体での御訪問先とは?

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先日のブログで触れた通り、令和8年(2026)の国民スポーツ大会に向けて青森県庁に皇族のご来県対応のための「行幸啓室」が新設されました。

これに関連して、今回は昭和52年(1977)に青森県で開催された「あすなろ国体」の折、昭和天皇はどのような場所を御訪問されたのかについて調べてみました。

「行幸啓」ではなく、「行幸」だった

「あすなろ国体」では、香淳皇后の御同行が叶わず、昭和天皇のみの青森県御訪問となりました。

宮内庁ホームページによると、香淳皇后はその年に腰を痛められて、それ以来、行事への御参加が困難となったそうです。

そのため、あすなろ国体では両陛下による御訪問「行幸啓」ではなく、天皇陛下のみの御訪問「行幸」となりました。

行幸啓は実現しませんでしたが、それでも昭和天皇をはじめ、多くの皇族方が青森県を御訪問されました。

ちなみに、このときに青森県庁に設置された対応部署の名前は、「行幸啓事務担当課(室)」。

総務部、県民生活部、国体局など7つの部門を横断する組織だったようです。

四日間に及んだ昭和天皇の行幸

あすなろ国体の翌年である昭和53年(1978)、青森県は「行幸啓誌」という書籍を出版しました。

それによると、天皇陛下の青森県行幸は14年ぶりのことで、当時の青森県知事・竹内俊吉氏は「148万県民にとってまことに光栄であり、感激の極み」と国体を振り返っています(当時はそんなに人口がいたんですね)。

「行幸啓誌」によると、昭和天皇は行きも帰りも飛行機で、どちらも三沢空港を利用、行幸中の御宿泊先は青森市のホテル青森でした。

四日間に及んだ青森県行幸中の御訪問先は以下の通りです(市町村は当時の名称)。

日付御訪問先市町村詳細ジャンル
9/30(金)青森県庁青森市・県勢概要御聴取
稲作展示御覧
青森県勢
農業
青森県立郷土館青森市・県の歴史、産業、文化の
 移り変わりについて御聴取
歴史文化
産業・農業
ホテル青森青森市・郷土芸能(八戸えんぶり)御覧歴史文化
10/1(土)青森県りんご試験場黒石市・りんごの作柄などについて御聴取
・りんご園にてりんごを自ら摘まれる
農業
弘前市役所弘前市・御昼食地域社会
津軽塗団地協同組合会館弘前市・津軽塗の工程御覧歴史文化
産業
10/2(日)棟方志功記念館青森市・棟方志功の作品を御覧歴史文化
青森県総合運動場陸上競技場青森市あすなろ国体開会式御臨場
・集団演技観覧
国体
10/3(月)青森市営競輪場青森市・自転車競技観覧国体
八戸市公民館八戸市・御昼食地域社会
八戸市体育館八戸市・バスケットボール競技観覧国体
百石町役場百石町・御少憩地域社会

※百石町は現在のおいらせ町。

こうして見てみると、青森県の農業(稲作、りんご)、歴史文化(八戸えんぶり、津軽塗、棟方志功)など、まんべんなく御視察なさったことがわかります。

また、青森県りんご試験場にてりんごを自ら摘まれたことも、心温まるエピソードですね^^

昭和天皇が御覧になった稲作展示

この中で印象的だったのは、青森県庁での稲作展示御覧

「行幸啓誌」では、青森県の稲作に関する展示を御覧になる昭和天皇の様子が載っているのですが、そこに写っている展示のテーマは「青森県の気象と冷害」。

別の日に青森県行啓なさった皇太子同妃殿下(現在の上皇上皇后両陛下)も稲作展示を御覧になっており、皇室の方々が稲作について深く考えてらっしゃることを窺い知ることができます。

(そういえば、いまや恒例行事になった皇居での稲作を始められたのも、昭和天皇なんですよね)

竹内青森県知事も、昭和天皇への県勢概要御聴取の際、しっかりと県の稲作の状況について言及。

試験研究機関を中心に耐冷性品種の開発と寒冷地稲作技術の普及に努めた結果、全国有数の米の生産県となったのであります」と説明しています。

この当時からの努力が実って、青森県のお米が特A米評価を受けられるようになったと思うと、ジーンときます…。

来年、青森で開催される国民スポーツ大会でも、青森県知事による県勢概要の御説明があると思いますが、稲作に関して良い御報告ができることを祈ります。

 

今回、私が参考にした「行幸啓誌」は昭和天皇の青森県行幸に関する詳細な資料が満載で、当時の青森県の雰囲気を知るための素晴らしい資料です。

別途、国立国会図書館デジタルコレクションへの登録が必要ですが、気になる方はこちらよりご覧ください。

参考資料

<国立国会図書館デジタルコレクション>

  • 『行幸啓誌』,青森県,1978.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12261230 (参照 2025-05-27)

<ウェブサイト>

  • 宮内庁ホームページ「昭和時代(戦後)における昭和天皇・香淳皇后の御活動状況について」(https://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/taio/taio-h28-0926.html)

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