この記事では、2023年3月に閉店した岩手県立美術館のレストラン「パティオ」について、かつての訪問体験とともに記録しています。
私は青森県に住んでいた頃からこの美術館が好きで、特に企画展と連動したパティオでの食事は、美術と食の両方を楽しめる貴重な時間でした。
本記事では、2010年の「ミュシャ展」時のコース料理を振り返っていきます。
パティオが閉店したのは2023年3月19日
岩手県への引っ越しが決まったのは、ちょうど昨年の今頃。
「これからは気軽に県立美術館に行けるな」と思っていた矢先、レストラン「パティオ」が閉店したというニュースを目にしました。
閉店日は2023年3月19日。
行動制限が緩和されたあとに「そのうち行こう」と思っていた場所が、気づけばなくなっていた──そんな経験、最近増えた気がします。
岩手に引っ越してすぐに行っておけばよかったと、今でも少し後悔しています。
企画展の余韻を深めてくれるレストラン
パティオは、美術館内の単なるレストランという以上に、企画展をより深く楽しませてくれる場所でした。
企画展ごとにテーマに合わせたオリジナルのコース料理(前菜・主菜・デザート)が提供されていて、展示と食事がリンクしているのが魅力でした。
価格は正確には覚えていませんが、たしか2,000円以上はしたはず。
「普段ならちょっと贅沢だけど、展示の雰囲気を味わいたいから」と財布の紐が緩む――そんな心理も上手にくすぐられました。
私は2〜3回ほどしか利用していませんが、美術館の雰囲気に浸りながら語らえる貴重なレストランだったと思います。
友人と展示の感想を話しながら食事をしたひとときは、今でも印象に残っています。
思い出に残る「ミュシャ展」の特別メニュー
たまたま古いデジカメに写真が残っていたのですが、2010年の「ミュシャ展」開催時に訪れたパティオで撮ったものです。
このとき、美術館の正面には日本国旗と並んで、ミュシャの出身国チェコ、活動の拠点だったフランスの国旗が掲げられていました。

料理の正式な名前は記録していなかったのですが、たしかチェコ料理とフランス料理のコースだったと記憶しています。
▽前菜
チーズやハムが美しく盛り付けられており、目でも楽しめる一皿でした。

▽主菜
肉料理はとてもやわらかく、しっとりした食感が印象的。味付けも上品でした。

▽デザート
アイスクリームは甘すぎず、展示を見終えたあとの余韻にふさわしい優しい味…なんて思った記憶があります。
この頃にはすっかり満ち足りた気分になっていました。

美術展の雰囲気がそのまま料理に落とし込まれたような空間で、視覚・味覚・感情のすべてでミュシャ展を堪能できた時間でした。
美術館と食の思い出を記録として残しておきたい
たった数回の訪問でも、こうして「また行きたかった」と思うのだから、常連だった方々にとってはもっと大きな喪失感があるのではないかと感じます。
美術館での体験を、さらに素晴らしいものにしてくれる空間だったパティオ。
閉店してしまった今だからこそ、その存在を記録として残しておきたいと思いました。
またいつか、こうした展示と連動した文化的なレストランがどこかに生まれてくれたら嬉しいです。
- 訪問場所:岩手県立美術館内レストラン パティオ(閉店)
- 住所 :岩手県盛岡市本宮字松幅 12-3
- 訪問時期:2010年5月