先日のブログで紹介した、ラトビアのリンケービッチ大統領の来日。
このニュースを見て、「日本とラトビアは要人の往来が多い関係なのかな?」と思い、外務省のホームページを調べてみたところ…
平成19年(2007)、天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)がラトビアを訪問されていたことを知りました。
どのような場所を訪問され、どんなお言葉を残されたのかを追ってみたところ、日本とラトビアの友好関係が100年近く続いてきたことが見えてきました。
天皇陛下がラトビアで述べられたお言葉
平成19年(2007)5月25日、ちょうど18年前の今頃。
両陛下はヨーロッパ諸国歴訪の一環としてラトビアをご訪問されました。
到着当日、首都リガにある「ブラック・ヘッド・ギルド」にて大統領同夫君主催午餐会が催され、天皇陛下がご答辞を述べられました。
以下、ご答辞の全文を引用いたします。
大統領閣下,御夫君
この度,お招きにより,皇后と共に初めてラトビアを訪問する機会を得ましたことを誠に喜ばしく思います。私どものために午餐会を催していただき,また,ただ今は,丁重な歓迎のお言葉をいただき,厚く御礼を申し上げます。
我が国と,貴国との友好関係を振りかえりますと,1928年,通商航海条約が締結され,翌年にはリガに日本の公使館が設置されました。この関係が,第2次世界大戦とその後の歴史の展開の中で閉ざされたことは,誠に残念なことでありました。
以来,大統領閣下ご自身を始め,大勢のラトビアの人々が,国の内外で計り知れない辛苦を経験されました。第2次世界大戦の戦場となり,多くの人命が失われ,社会が破壊され,物的な損害にも多大なものがありました。ラトビアの人々が,その後の苦しい時代を通じ,勇気と誇りをもって困難に立ち向かってきた歴史を私どもは忘れてはならないと思います。
1991年,バルト三国が旧ソ連邦の中から初めての独立国となったとの報せを受け,歴史の大きな流れに深い感慨を覚えたことを思い起こします。以来15年余り,欧州の一員として,民主化と経済,社会の発展の道を着実に歩んでいる貴国の人々の英知と努力に心から敬意を表したく思います。
このような歴史を経てきた貴国と我が国との間に,再び,友好の関係が発展しつつあることは誠に喜ばしいことであります。この度の私どもの訪問が,両国の国民の間の相互理解をさらに深め,相互の交流を一層進めることとなれば嬉しいことと思います。
ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに御夫君の御健勝とラトビア国民の幸せを祈ります。
出典:宮内庁ホームページ「天皇皇后両陛下 ヨーロッパ諸国ご訪問時のおことば」
「1928年に通商航海条約が締結」…
日本とラトビアの外交関係は今から約100年前、大正時代に始まっていたことを、私は初めて知りました…!
約100年に及ぶラトビアとの友好
以下に、日本とラトビアの関係を時系列で整理してみました(参考:外務省ホームページ、在ラトビア日本国大使館ホームページ)。
和暦 | 西暦 | 日本・ラトビアの出来事 |
大正7 | 1918 | ・ラトビアが独立宣言 |
大正9 | 1920 | ・ラトビアが独立戦争に勝利 |
大正10 | 1921 | ・仏、伊、英、ベルギー、日本がラトビアを国家承認 |
昭和3 | 1928 | ・日本とラトビアが通商航海条約締結 |
昭和4 | 1929 | ・日本の公使館がラトビアの首都リガに設置 |
昭和15 | 1940 | ・ソ連のラトビア併合により関係中断、公使館閉鎖 |
(経過) | ・1940年代…第2次世界大戦でラトビアが戦場に ・1945〜1990年頃 …ソ連構成国として苦難の時代を過ごす | |
平成2 | 1990 | ・ラトビアが独立回復宣言 |
平成3 | 1991 | ・日本がラトビアを国家承認 |
平成12 | 2000 | ・在ラトビア日本大使館開設 |
平成18 | 2006 | ・駐日ラトビア大使館開設 |
平成19 | 2007 | ・天皇皇后両陛下がラトビアをご訪問 |
令和元 | 2019 | ・レヴィッツ大統領が即位の礼出席のため来日 |
令和3 | 2021 | ・日本ラトビア友好100周年 |
令和7 | 2025 | ・リンケービッチ大統領が万博参加のため来日 |
こうして見ると、ラトビアとは長い時間の中、ときに途切れながらも再びつながってきた大切な友好国であることがよくわかります。
ご答辞の中で言及されていた「その後の苦しい時代」は第二次世界大戦に始まり、およそ半世紀続きました。
このご訪問時に両陛下は「占領博物館」という施設を視察されているのですが、この施設の名称からラトビアの歩んできた歴史の壮絶さを感じました。
非常に困難な状態に耐え、なおそれを語り継ぎ、二度と繰り返させまいとする国としての意思が、この名称にも表れているように感じます。
遠い国だけど、近しい国でもある
戦争によって一度は関係が断絶したものの、ラトビアの再独立を日本がいち早く承認し、そこから両国の歩みが再び始まったことを思うと、地理的な距離に反して、歴史的な繋がりのある近しい国のように思えてきます。
そして、2021年には日本とラトビアの友好関係樹立から100周年を迎えました。
ここでふと思い出したのは、先日のブログで触れた日本推しラトビア人のアルトゥルさん。
このような友好関係が土台としてあったから、日本を好きになってくれたのかなぁなんて思ってしまいます^^
先日行われた日ラトビア首脳会談では、政治・経済・安全保障といった幅広い分野での連携が確認されました。
両国間の関係がこれからも着実に実を結んでいって欲しいと思います。
参考資料
- 「ヨーロッパ諸国ご訪問(平成19年)」(https://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/gaikoku/h19europe/eev-h19-europe.html)
- 「天皇皇后両陛下 ヨーロッパ諸国ご訪問時のおことば」(https://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/speech/speech-h19e-europe.html#LATVIA)
<ウェブサイト>
- 外務省ホームページ「ラトビア共和国|外務省」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/latvia/index.html)
- 在ラトビア日本国大使館 Japānas vēstniecība Latvijā「日ラトビア友好100周年 – Japānas vēstniecība Latvijā」(https://www.lv.emb-japan.go.jp/itpr_ja/japan_latvia_100th.html)()