歴史を学ぶ

【青森県弘前市】スポット企画展「マンガ陸羯南 原画展」を振り返る

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青森県弘前市にある弘前市立郷土文学館。

郷土ゆかりの作家を紹介している文化施設で、石坂洋次郎や今官一などの資料が数多く展示されています。

そんな弘前市立郷土文学館で今夏開催されたのが、先日のブログでも紹介した「マンガ陸羯南 原画展」(会期:7月22日~9月24日)。

今年4月に刊行された「マンガふるさとの偉人 陸羯南」の原画と関連資料を展示したもので、私は会期終了ギリギリのタイミングで訪問。

明治の言論人、陸羯南を学ぶうえで非常に有意義だったこのスポット企画展を振り返ってみます。

文学館入り口には陸羯南の漢詩が

弘前市立郷土文学館に入ると、視界に入ってきたのがこの黒板でした↓

展示室に入る前から素敵な演出が始まっています

風雲寂莫池龍志 山海隔離籠鶴憂

(風雲寂莫たり池龍の志 山海隔離す籠鶴の憂)

「国のために働きたい こんなにも強い思いをもっているのに 自分は辺境の地にいる

まるで 池の中にいる龍 籠の中にいる鶴 のようだ」

この漢詩は陸羯南が24歳の頃に詠んだもので、「マンガふるさとの偉人 陸羯南」では35ページに登場する印象的な場面です。

司法省法学校の退学処分を受けた陸羯南は青森新聞社の編集長を経て、紋別の製糖所に勤務していました。

製糖所でフランス語の技術書を翻訳する日々を送っていたときに、この漢詩を詠んだんだそう。

池龍」(池の中にいる龍)、「籠鶴」(籠の中にいる鶴)という表現が非常に美しく、そして明快です。

20代のときすでに「国のために働きたい」という思いを抱いていた陸羯南。

陸羯南に限らず、近代の日本を生きた先人たちは「日本を良くしたい」という思いを抱く方々がたくさんいたんだなぁと。

そうした先人たちのおかげで、今の治安の良さ、快適な暮らしがあるんだなぁとしみじみ感じます。

ネームの隣には貴重な一次資料が

弘前市立郷土文学館に入るとすぐに受付があり、その奥に展示室があるんですが、その入り口には陸羯南のイラストがドーンと。

展示室に入るとすぐに今回のスポット企画展のスペースがあり、漫画家の仁山渓太郎氏による原画が数枚展示されていました。

陸羯南自ら訪問者をお出迎え

スペース自体はそれほど大きくはないのですが、原画の隣に関連する一次資料と解説が展示されていて、充実した内容でした。

上京して文書局で勤務していた際に翻訳した『主権原論』(ジョセフ・ド・メストル著)が展示されていたんですが、表紙には大きい文字で「陸実」の文字が!

この当時、陸羯南は28歳、まだ陸実を名乗っていた頃の翻訳本で、けっこう分厚い本でした。

なお、この『主権原論』は国立国会図書館デジタルコレクションでも閲覧可能です↓(利用者登録が別途必要)

ちょっと覗いてみたんですが………そっとページを閉じました。明治時代の文語は難しいですね…。

その他に気になったのが、原画の中の言葉遣いにところどころチェックが入っていたこと。

「依願退職」→「辞職」に訂正されていたり、注釈が追加されていたり、ところどころに色ペンでチェックが入っていました。

原案の櫛引洋一氏と監修の舘田勝弘氏によるものだと思うのですが、細かいところまで修正されているのが印象的でした。

陸羯南の生涯を誤解なくわかりやすく伝えるため、様々な製作工程を経て完成しているんだなぁとしみじみ。

未来ある子どもたちのために作られたものですものね、製作者の方々の熱意がよく伝わってきます。

こういうのを知ると、作品のありがたみがより実感されますね。

最後に陸羯南バッジのサービスが

展示をすべて見終わった後、再び展示室前の陸羯南の元へ。撮影が自由だったので、パシャパシャと撮影しました。

左から:マンガに登場するセリフ(富士山登山時)、陸羯南の由来になった漢詩、陸羯南が世話をした正岡子規の残した墓碑

なんてことをしていたら、受付の方から陸羯南バッチをプレゼントしてもらいました!粋なサービスですね~。

何種類かあったんですが、マンガの表紙イラストのものを選びました

こういう郷土文学館とか記念館とか行くといつも思うのですが、入館料、こんなに安くていいのかなぁ?

弘前市立郷土文学館の観覧料金、大人100円ですよ、小中学生なら50円とさらに安い。

なんやかんや他の展示を見ていたら一時間ほど滞在していたし、そしてバッジまでもらえるしで、これで100円かぁ。おもてなしがすごい!

こういう良い思い出があると、また訪れたくなりますよね~。今後も展覧会情報をチェックせねば!

 

なお、今回のスポット企画展のマンガは下記より読むことが可能です↓

 

  • 企画展 :スポット企画展「マンガ陸羯南 原画展」(終了)
  • 観覧料 :小・中学生50円、一般100円
  • 開催期間:2023年7月22日(土) ~ 2023年9月24日(日)
  • 休館日 :年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間(3月22日~3月31日)
  • 開催場所:弘前市立郷土文学館(青森県弘前市大字下白銀町2-1)

 

<参考資料>

弘前市ウェブサイト「弘前市立郷土文学館」(https://www.city.hirosaki.aomori.jp/bungakukan/)

・弘前市立郷土文学館 編集「第39回企画展 陸羯南展」

・ジョゼフ・ド・メストル 著 ほか『主権原論』,博聞社,明18.9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/789025 (参照 2023-12-11)

国立国会図書館デジタルコレクションの閲覧には、利用者登録が必要な場合があります。

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