先日のブログで取り上げた秋田県大仙市の花館にある津軽藩の御本陣跡。
御本陣になっているのは齋藤勘左衛門家という家で、本陣跡は現在は花館コミュニティセンターとなり、そのすぐ近くに本陣の庭園跡があります。
羽州街道の宿場町として栄えた花館は、歴史好きの私にとって気になる地域です。
そこで、花館地域の歴史について調べてみたところ、その歴史はある山と花に深く関わっていることがわかりました。
「姫神山」と「二筋の川」と「桜」
ある地域の特色や歴史について知りたいと思ったとき、私がよくやるのは地域の学校の校歌や校章を調べること。
校歌や校章にはその地域を象徴するものが盛り込まれている場合が多いので、地域の歴史を知る手がかりになったりします。
そういうわけで、津軽藩の御本陣跡のすぐ近くにある花館小学校の校歌や校章を調べてみました。
「姫神」「二筋の川」と歌う校歌
花館小学校の校歌の中には、地理に関係する二つの言葉が登場します。
それは、「姫神の山」、「二筋の川」。
この歌詞が示しているのは、「姫神山」と、その周辺を流れる「雄物川」と「玉川」のこと。
ざっくりイラストにすると、こんな位置関係です↓
雄物川、玉川と、大きい川が二筋流れている花館地域。
先日のブログで、花館小学校の石垣がとても立派と書きましたが、確かにこの川に囲まれた立地を考えると、あのくらいの規模が必要なんでしょうね。
もう一つの歌詞の「姫神山」なんですが、小学校から見て西側、雄物川を越えたところにある山です。
実際の写真は手元にないので紹介できないのですが、頂上に電波塔が建っている山で、頂上付近がトゲトゲして見えてかわいいんですよね。
校章は桜の輪郭に「學」の文字
花館小学校の校章は、桜の輪郭に「學」(学の旧字)です。
桜は菊と並ぶ日本の花ということで、いろんな学校の校章に使用されています。
なので、特に珍しいとは思わなかったんですが…花館の郷土史「写真に見る花館の歴史」の1ページ目にも桜が描かれているんですよね。
ということは、花館と桜の関係は深いのでは?と思い、ちょっと調べてみました。
「山に櫻樹多かりしを以て、花舘」
『大曲市年表・大曲市民生活史』(1973年)という本によれば、花館という名前の由来に関し、こんな記述がありました↓
(松山一帯には)数多くの桜やつつじが生え繁り「桜長嶺」とか「花立長嶺城」とか「花の舘」といわれた(立つ花の多いところから)といわれています。
※松山とは、姫神山に隣接する山のこと
出典:『大曲市年表・大曲市民生活史』
さらに、古い資料である『仙北郡案内』(1912年)には、以下の記述も↓
俗傳に、中古奧羽の名族安部氏此に居る山に櫻樹多かりしを以て、花舘と稱へらる
出典:『仙北郡案内』
小学校の校章や郷土史の1ページ目に桜が描かれているのは、花館という名前の由来に桜が深く関わっているためだと思われます。
ちなみに、近代から現代にかけても、花館では地域をあげて桜の植樹を行っているようです↓
- 明治33年(1900)、皇太子殿下の御慶事記念に松山に松300本、桜300本を植栽
- 平成21年(2009)より、花館小学校の生徒たちが姫神山に桜を毎年植樹
郷土の歴史が受け継がれていくことに感動します。
来年の春は姫神山に桜を観に行こう
花館を象徴する山は姫神山で、姫神山の一帯には古来より桜があり、現代にいたるまで植樹も行われてきている。
花館という地域にとって、姫神山と桜が象徴的な存在であることは理解したのですが…
花館の桜って、あんまり観光で売り出してはいないですよね。
去年はだいぶ秋田県南各地の桜を観て回ったんですが、姫神山の桜は私の検索にはヒットせず。
隠れた桜の名所ということでしょうか…?
来年の春は、姫神山に桜を観に行くことにします!
<参考資料>
・『写真に見る花館の歴史』,花館の会,大曲市花館財産区,昭和59年.
・大仙市立花館小学校公式サイト
・三森英逸 著『大曲市年表・大曲市民生活史』,三森印刷所,1973.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9537949 (参照 2023-12-15)
・飯村稷山 編『仙北郡案内』,彩雲堂佐々木吉次郎,大正1. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/947776 (参照 2023-12-15)
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