歴史を学ぶ

【御製の背景を知る】晩餐会の御言葉でたどる皇室とベルギー王室100年の交流史

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前回までの記事では、平成5年(1993)に当時の天皇陛下であられた上皇陛下がお詠みになった御製

四十年をむつみ過ごししベルギーの君まさずして宮訪ねけり

を手掛かりに、ベルギー王室のボードワン1世国王陛下との四十年にわたる御交流についてご紹介しました。

令和8年(2026)のベルギー御訪問では、天皇陛下がラーケン宮での晩餐会において、皇室とベルギー王室との御交流の歴史を振り返られています。

今回は、その御言葉を手掛かりに、日本とベルギーの外交の歩みと、皇室とベルギー王室との御交流の歴史を御代ごとに整理してみたいと思います。

外交関係の始まり――孝明天皇の御代

天皇陛下は今回の御言葉の中で、日本とベルギーの友好関係は、1866年(慶應2年)の日白修好通商航海条約に始まると述べられました。

当時の日本は江戸幕府の時代であり、孝明天皇の御代に当たります。

この条約によって、日本とベルギーとの外交関係が始まりました。

岩倉使節団の派遣――明治天皇の御代

その後、明治政府は近代国家建設を目指し、1871年から73年(明治4年から同6年)まで岩倉使節団を欧米へ派遣しました。

ベルギーも訪問国の一つであり、使節団の記録には、独立から日が浅い国でありながら産業や交易が発展し、日本の近代化の模範となる国であるとの印象が記されています。

この頃は、まだ皇室とベルギー王室との御交流というよりも、国家同士の結び付きが深められた時代でした。

皇室交流の始まり――大正天皇の御代

天皇陛下は、皇室とベルギー王室との御交流の始まりとして、大正10年(1921)の皇太子殿下(後の昭和天皇)のベルギー御訪問を挙げられました。

この御訪問をもって、現在まで続く皇室とベルギー王室との御交流の歴史が始まったことが、御言葉の中で示されています。

「親交の土台」が築かれた時代――昭和天皇の御代

今回の御言葉の中で最も多く語られているのが、昭和天皇の御代です。

時系列に沿って整理してみましょう。

昭和28年(1953)

皇太子時代の上皇陛下は、英国エリザベス2世女王陛下の戴冠式に御参列されました。

その際、当時のアルベール王子殿下(後のアルベール2世国王陛下)と初めてお会いになり、その後の旅の途上でボードワン1世国王陛下からラーケン宮へ招かれました。

天皇陛下は、この出会いをきっかけに深い交友関係が築かれ、それが「今日の両国の皇室と王室との親交の土台」となったと述べられています。

前回までの記事でご紹介した上皇陛下とボードワン1世国王陛下との四十年にわたる友情は、まさにここから始まりました。

昭和51年(1976)

皇太子時代の天皇陛下は、初めてベルギーを御訪問になりました。

学生時代に上皇后陛下がお世話になったブルージュ郊外のアールトリック城に滞在され、ドゥ・マール・ダールトリック家の皆さんから温かい歓迎を受けられています。

また、ボードワン1世国王陛下とファビオラ王妃陛下の御招待により、スペイン・モトリルの御別荘にも滞在され、「家族の一員のようなおもてなし」を受けられたことを懐かしく振り返られました。

昭和58~60年(1983~1985)

英国留学中にも、ボードワン1世国王陛下とファビオラ王妃陛下の御招待により、何度かベルギーを訪問されています。

アストリッド王女殿下の御結婚式に御出席され、ファビオラ王妃陛下とともにエリザベート王妃国際音楽コンクールを鑑賞されるなど、御交流を重ねられました。

昭和59年(1984)

この年には、アフリカ御訪問の途上でベルギーに立ち寄られた上皇上皇后両陛下(当時皇太子同妃両殿下)とともにラーケン宮へ招かれました。

ボードワン1世国王陛下、ファビオラ王妃陛下、当時王弟であられたアルベール王子殿下、さらにオランダのベアトリックス女王陛下も交えたひとときを、天皇陛下は「忘れ得ぬ思い出」として振り返られています。

次の世代へ受け継がれた友情――平成の御代

平成に入り、親交の土台を築かれたボードワン1世国王陛下が平成5年(1993)に崩御された後も、両国の御交流は次の世代へと受け継がれていきました。

平成11年(1999)

当時皇太子であられた天皇陛下と皇太子妃であられた皇后陛下が、フィリップ皇太子殿下(現在のフィリップ国王陛下)の御結婚式に御招待を受けて御出席になりました。

このとき、マチルド妃殿下(現在の王妃陛下)とも初めてお会いになり、以来、今日まで親交を深めてこられています。

平成14年(2002)

日本と韓国で開催されたFIFAワールドカップでは、訪日されたフィリップ皇太子殿下、マチルド妃殿下とともに日本対ベルギー戦を観戦されました。

天皇陛下は、この日のことを皇后陛下との「大変良い思い出」として振り返られています。

新しい一ページへ――令和の御代

令和の御代に入ってからも、皇室とベルギー王室との御交流は着実に続いています。

令和元年(2019)

フィリップ国王陛下とマチルド王妃陛下が、天皇陛下の即位礼に御参列されました。

当時、駐日ベルギー大使館もXで「ベルギー王室と日本の皇室は、世代を超えて親密な関係を築いてきました」と紹介しています。

令和6年(2024)

フィリップ国王陛下は、日本とのビジネス・ラウンドテーブルに御臨席され、日本企業との御交流を深められました。

令和8年(2026)

日本とベルギーの外交関係樹立160周年という節目の年に、天皇皇后両陛下はベルギーを国賓として御訪問になりました。

天皇陛下は晩餐会の御言葉の中で、

長きにわたって続く交流の歴史に、新しい1ページを加えることができることをうれしく思います。

出典:宮内庁「天皇皇后両陛下 オランダ及びベルギーご訪問時のおことば(一覧)」

と述べられています。

今回の御言葉全体を振り返ると、皇室とベルギー王室との御交流は、一代限りのものではなく、約100年にわたって世代から世代へと受け継がれてきたことがよく分かります。

前回まで取り上げてきた上皇陛下とボードワン1世国王陛下との四十年にわたる友情も、その長い交流史の中で築かれた「親交の土台」であったことを、改めて感じさせられる御言葉でした。

ベルギー王室と皇室との交流年表

前回までの記事に引き続き、ここまでの流れを年表にしてまとめてみました。

 和暦  西暦出来事
慶應21866 ・日白修好通商航海条約が締結され、
  日本とベルギーの外交関係が始まる
明治
4~6
1871~1873 ・岩倉使節団がベルギーを含む欧米12か国を訪問
 ・ベルギーの産業・経済を視察し、日本の近代化の参考とする
大正101921 ・皇太子殿下(後の昭和天皇)がベルギーを御訪問、
  皇室とベルギー王室との御交流が始まる
昭和5 1930 ・ボードワン1世陛下御誕生
昭和261951 ・レオポルド3世が退位
 ・ボードワン1世国王陛下が20歳でベルギー国王に即位
昭和281953 ・皇太子殿下(現在の上皇陛下)が、
  英国エリザベス2世女王陛下の戴冠式に御参列
 ・このとき、ボードワン1世国王陛下の弟君であるアルベール王子殿下と
  初めてお会いになる
 ・その後の旅の途上でベルギーを訪問し、
  ボードワン1世国王陛下からラーケン宮へ招かれる
 ・これをきっかけに深い御交流が始まり、
  今日の皇室とベルギー王室との「親交の土台」が築かれる
昭和511976 ・浩宮徳仁親王殿下(現在の天皇陛下)が初めてベルギーを御訪問
 ・ボードワン国王陛下・ファビオラ王妃陛下の招待で
  スペイン・モトリルの別荘を御訪問
 「家族の一員のようなおもてなし」を受ける
昭和
58~60
1983~1985 ・浩宮徳仁親王殿下(現在の天皇陛下)英国留学
 ・留学中、ボードワン国王陛下・ファビオラ王妃陛下の招待により、
  たびたびベルギーを訪問
 ・アストリッド王女殿下の結婚式に御出席
 ・ファビオラ王妃陛下とエリザベート王妃国際音楽コンクールを御鑑賞
昭和591984 ・皇太子同妃両殿下(現在の上皇上皇后両陛下)と
  浩宮徳仁親王殿下(現在の天皇陛下)がラーケン宮に招かれる
 ・ボードワン1世国王陛下、ファビオラ王妃陛下、アルベール王子殿下、
  オランダのベアトリックス女王陛下と楽しいひとときを過ごされる
平成21990 ・天皇陛下(現在の上皇陛下)の即位礼にボードワン1世国王陛下が御参列
平成51993 ・7月31日、ボードワン1世国王陛下崩御
 ・8月7日、天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)が国葬に御参列
 ・御製「四十年をむつみ過ごししベルギーの君…」をお詠みになる
平成111999 ・皇太子同妃両殿下(現在の天皇皇后両陛下)が
  フィリップ皇太子殿下(現在のフィリップ国王陛下)の御結婚式に御出席
 ・マチルド妃殿下(現在の王妃陛下)と初めて御対面
平成142002 ・FIFAワールドカップ日韓大会で、
  皇太子同妃両殿下(現在の天皇皇后両陛下)が
  フィリップ皇太子殿下・マチルド妃殿下と日本対ベルギー戦を御観戦
令和元2019 ・フィリップ国王陛下、マチルド王妃陛下が天皇陛下の即位の礼に御参列
令和62024 ・フィリップ国王陛下が王宮府にて
  日本とのビジネスラウンドテーブルを主催
令和82026 ・日本・ベルギー外交関係樹立160周年
 ・天皇皇后両陛下が国賓としてベルギーを御訪問

参考資料

  • 宮内庁「天皇皇后両陛下 オランダ及びベルギーご訪問時のおことば(一覧)」(https://www.kunaicho.go.jp/watch/okotoba/imperial-family01/addresses/2026nld-bel.html)
  • 外務省ホームページ(日本語)「ベルギー基礎データ|外務省」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belgium/data.html)(2026/2/13)
  • 在ベルギー日本国大使館「【大使】フィリップ国王陛下のトヨタ・モーター・ヨーロッパ社研究開発センターご訪問及び日本企業とのビジネス・ラウンドテーブルご臨席」(https://www.be.emb-japan.go.jp/itpr_ja/news_240507.html)(2024/5/13)

 

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※サムネイル画像出典:Aleksa Aleksi「View of the front facade of the Royal Palace in Laeken」Wikimedia Commons(CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication/パブリックドメイン)※水彩画風に加工・サイズ調整あり https://commons.wikimedia.org/wiki/File:View_of_the_front_facade_of_the_Royal_Palace_in_Laeken

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